2013年05月12日

「こどもの日」に思う……『鐘撞き人』からのメッセージ3

1. 憲法記念日の5月3日〔1947年の施行日〕に綴られた1944年の日記がある。「そもそもなぜ人間は、ますます大きな飛行機、ますます大型な爆弾をいっぽうでつくりだしておきながら、いっぽうでは、復興のためにプレハブ住宅をつくったりするのでしょう?」。これは『アンネの日記』で「親愛なるキティへ」呼びかけた疑問だ。

2. 「いったいどうして、毎日何百万という戦費を費やしながら、そのいっぽうでは、医療施設とか、芸術家とか、貧しい人たちのために使うお金がぜんぜんない、などということが起こりうるのでしょう?」と、アンネの第2の疑問がわきます。まず、これらの設問は、3・11体験を経た現代社会に生きる人びとにも現実味が大きく深い。

3. 「世界のどこかでは、食べものがありあまって、腐らせているところさえあるというのに、どうしていっぽうには、飢え死にしなくちゃならないひとがいるのでしょう?」
≪隠れ家≫生活で腐ったジャガイモを大事にアンネの家族らは、息を潜めながら食べていた。そんな窮乏生活の中で、飢える人びとへの優しい思いやりに胸がつまる。

4. 「いったいどうして人間は、こんなにも愚かなのでしょう?私は思うのです。戦争の責任は、偉い人たちや政治家、資本家にだけあるのではありません。そうですとも、そうでなかったら、世界じゅうの人びとはとうに立ちあがって、革命を起こしていたでしょうから。」と、私たち1人ひとりの<戦争責任>について迫ります。

5. 「もともと人間には、破壊本能が、殺戮の本能があります。殺したい、暴力をふるいたいという本能があります。」とアンネは戦争が世界からなくならないのは、人間が持つ<破壊本能>にあるという社会哲学の命題を提示。だからこそ、きな臭い日本周辺では隣国とともに談論風発して「いかに戦争回避の道」を探るのが第一だ。

6. 「ですから、全人類がひとりの例外もなく心を入れかえるまでは、けっして戦争の絶えることはなく、それまで築かれ、つちかわれ、はぐくまれてきたものは、ことごとく打倒され、傷つけられ、破壊されて、すべては一から新規まきなおしに始めなくちゃならないでしょう。じゃまた、アンネ・M・フランクより」とペンを置く。

7. 戦場に駆りたてられるのは「子どもたち」の世代だ。このアンネの社会哲学的な設問に真摯に解答かつ回答すべく『鐘撞き人』第V部<愛と平和>篇を2013年5月3日付けで上梓した。古今東西の名作名画50本からのメッセージをあぶり出して、私たち一人ひとりが「戦争責任とは?」を考えるきっかけになれば、と思っています。
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2013(平成25)年5月5日 「こどもの日」に  岳 重人
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「みどりの日」に思う……『鐘撞き人』からのメッセージ2

1. 「持続化可能の開発って何?」を一年前のこの口に<東北再生スケッチ>三部作の『舟曳き人』第U部<核と未来>篇でまとめている。「現代の世代が引き継いだ遺産を、少なくとも同じ程度のものだけは次世代に引き継ぐことであり、生態系のもっている扶養再生能力の範囲内で生活しながら、生活の質を向上させること。」

2. 今、世界文化遺産登録で話題になっているのが富士山だ。『種蒔き人』第T部<夢と希望>篇で、葛飾北斎が「冨嶽三十六景」で日本文化に根差した想いを<ホッホとKenjiの往復書簡>を談論風発した。「信仰・芸術の遺跡群」として世界的に認められるのは、ホッホさんが崇敬したPereタンギーがとても驚喜しているだろう。

3. 『タンギー爺さん』の頭の辺りに<フジヤマ>を描いたのは日本人の信仰心にあやかって<後光>をイメージしたものだった。江戸時代は<不二山>信仰がブームになったほどで、庶民にとっては北斎の「冨嶽三十六景」が、評判だったことでがわかる。彼の文字絵の教本には「大八に小八重ねてふじのやま」と三峰を象徴させている。

4. 今回、6月に正式登録される富士山は、以前は国内候補で「周辺環境がゴミだらけで自然遺産にふさわしくない」とされた。『鐘撞き人』第V部<愛と平和>篇では「伊達正宗は<甲斐の富士>をいつ見たのか」が話題になっている。宝永4(1707)年に大爆発して富士四湖が富士五湖になった。まだ10万年の若い活火山なのだ。

5. 北斎や広重の浮世絵に滲む江戸時代の<風景と風情>を多くの人々に再認識してもらうには文化遺産登録は、ちょうどキャンペーンにもいい。だから、もう一度、江戸を再発見する大事業が必要。あまりにも味わいのない景色になりつつあるから……。広重浮世絵に刺激された『花咲く梅の木』『雨中の橋』の模写を見直してほしい。

6. 練馬区立南田中図書館での≪環境映画≫上映会第12弾『流〜ながれ〜』はそんな問題意識を啓発する秀作である。製作・撮影の能勢広撮影監督と編集も兼ねた村上浩康監督によって中津川を10年間≪飽くなき探究心≫で追及された努力に頭が下がる。
カワラノギクもヒゲナガカワトビケラも大自然の生態系の中で生かされている。

7. また、「土用の丑」の日が消える? ワシントン野生動物植物取引条約でヨーロッパウナギとアメリカウナギが絶滅状態だ。ニホンウナギも大同小異だ。その原因とは、古里の川を遡るウナギが護岸工事や堰、そしてダムのため産卵する場所が激減したからだ。だからこそ「生態系のもっている扶養再生能力の範囲内」生活を大事にしたい。
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2013(平成25)年5月4日 「みどりの日に」 岳 重人
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2013年05月10日

憲法記念日に思う……『鐘撞き人』からのメッセージ

1. 日本国憲法が施行されてから66歳の年月が流れた。
私自身が1946年生まれで、いわゆる≪平和憲法≫と共に生きてきた実感が強い。
この間、日本人は他国との戦争によって犠牲者を出してはいない。
何か現代の若者は「平和ボケ」して軟弱だとか、愛国心が足りないとか、為政者はとかく「強い日本」ばかりを強調している。

2. 「祖国に捧げる死は、甘美である」とは、日本の特攻隊で命を捧げた青年たちの遺言では
ない。
ルイス・マイルストン監督『西部戦線異状なし』(30)が、情念で戦場に駆り立てる世相を反映したドイツを活写。
そのためか、ナチスによる上映妨害第1号になる。
第3回アカデミー賞の作品・監督賞をダブル受賞しているにもかかわらず……。

3. ちょうど80年前の1933年、日本国憲法と並び称されるワイマール憲法が、ヒトラー率いるナチスによって葬り去られ、ナチ独裁体制が確立されていった。
十代の若者たちも<ヒトラー・ユーゲント>として、独裁者たちの手足として動員された。
その背景には青年教育によって、永続的なナチス運動を定着させる狙いがあった。

4. 「いま私がたっている場所に、もうすぐあなたが立つのです。」と、ギロチン台に立たされたゾフィー・ショルは民族裁判所長官ローラント・フライスラー判事に凛々しく反論。
マルク・ローテムント監督『白バラの祈り〜ゾフィー・ショル、最後の日々』(05)は第55回ベルリン国際映画祭銀熊賞・最優秀監督賞・同女優賞に輝いた。

5. 昨年、生誕百周年を迎えた木下惠介監督『陸軍』(44)は、祖父、父、息子の三代に渡っ
て陸軍に捧げつくした一家の物語。
母(田中絹代)が出征する息子を見送るラストの長い移動シーンが美しくて感動的にもかかわらず、「戦意高揚にならない」と陸軍で問題にされ、国策映画の検閲に触れ、木下監督は映画界の仕事を奪われる。

6. 今から90年前の関東大震災の大正12(1923)年と平成23(2011)年の東日本大震災に奇妙な「23」という数字が隠れている。
2年後の1925年3月には衆議院で治安維持法が可決される。
平成25年7月には、参議院選挙で日本国憲法を根本的に改変するために、「憲法96条を変える」を選挙の争点にすべく世論を盛り上げている。

7. このような危機感から一冊の本を上梓。それが<東北再生スケッチ>三部作の完結編の『鐘撞き人』第V部<愛と平和>篇である。
≪平和憲法≫第9条、第19条「思想及び良心の自由」と第99条「憲法尊重擁護の義務」を<世界の知的文化遺産>として世界に広めよう、とファン・ホッホ(ヴァン・ゴッホ)が呼びかけている。
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2013(平成25)年5月3日 「66歳の憲法記念日」に   岳 重人
posted by 岳重人 at 18:18| Comment(0) | 日記