2. 「いったいどうして、毎日何百万という戦費を費やしながら、そのいっぽうでは、医療施設とか、芸術家とか、貧しい人たちのために使うお金がぜんぜんない、などということが起こりうるのでしょう?」と、アンネの第2の疑問がわきます。まず、これらの設問は、3・11体験を経た現代社会に生きる人びとにも現実味が大きく深い。
3. 「世界のどこかでは、食べものがありあまって、腐らせているところさえあるというのに、どうしていっぽうには、飢え死にしなくちゃならないひとがいるのでしょう?」
≪隠れ家≫生活で腐ったジャガイモを大事にアンネの家族らは、息を潜めながら食べていた。そんな窮乏生活の中で、飢える人びとへの優しい思いやりに胸がつまる。
4. 「いったいどうして人間は、こんなにも愚かなのでしょう?私は思うのです。戦争の責任は、偉い人たちや政治家、資本家にだけあるのではありません。そうですとも、そうでなかったら、世界じゅうの人びとはとうに立ちあがって、革命を起こしていたでしょうから。」と、私たち1人ひとりの<戦争責任>について迫ります。
5. 「もともと人間には、破壊本能が、殺戮の本能があります。殺したい、暴力をふるいたいという本能があります。」とアンネは戦争が世界からなくならないのは、人間が持つ<破壊本能>にあるという社会哲学の命題を提示。だからこそ、きな臭い日本周辺では隣国とともに談論風発して「いかに戦争回避の道」を探るのが第一だ。
6. 「ですから、全人類がひとりの例外もなく心を入れかえるまでは、けっして戦争の絶えることはなく、それまで築かれ、つちかわれ、はぐくまれてきたものは、ことごとく打倒され、傷つけられ、破壊されて、すべては一から新規まきなおしに始めなくちゃならないでしょう。じゃまた、アンネ・M・フランクより」とペンを置く。
7. 戦場に駆りたてられるのは「子どもたち」の世代だ。このアンネの社会哲学的な設問に真摯に解答かつ回答すべく『鐘撞き人』第V部<愛と平和>篇を2013年5月3日付けで上梓した。古今東西の名作名画50本からのメッセージをあぶり出して、私たち一人ひとりが「戦争責任とは?」を考えるきっかけになれば、と思っています。

2013(平成25)年5月5日 「こどもの日」に 岳 重人