2013年11月23日

「ケネディ暗殺の日」に思う……『鐘撞き人』からのメッセージ(12)

キャロライン・ケネディ氏が軽やかに爽やかに新駐日大使として東京の地を踏みしめた。来日後の11月16日はメディアの各紙が一面トップで報じた。ちょうど半世紀前の11月22日には父のジョン・F・ケネディ大統領は ダラスで暗殺された。あの時の衝撃は日米初の衛星放送で伝えられた。これも<歴史の因縁>が感じられる。

★つい2日前に、このような書き出しで、日本の政治状況を切り出した。昨夜は11・21「特定秘密保護法案・廃案1万人集会」が日比谷野外音楽堂で開催された。
集会後には午後8時過ぎから銀座と国会コースに分かれて、まるでヘビのようにつながりデモ参加者として感動しつつ、口々にシュプレヒコール「絶対反対」を繰り返した。

★国会コースで平常は10分足らずだが、この日は交差点などでたびたび規制があり、右手に国会議事堂を目にするまで1時間ほどかかった。ある若い女性は「フランスだったら、こんな整然とデモしないわね」と友だちに呟いていた。
何事も規律を守る日本人のすばらしさを実感しながらの請願デモで、なぜ「秘密保護法」が必要なのか。

★主催者5団体の幟の旗がそれぞれ秋の風に翻る風景は心地いい。たまたま「アジア、アフリカ、ラテンアメリカAALA-JAPAN連帯委員会」の旗を横目に見ながら、チェ・ゲバラの『子どもたちへの最後の手紙』(65)で「世界のどこかで誰かが不正の目にあっているとき、いたみを感じるようになりなさい」を思い出す。

★その時に経済産業省前の交差点で「経産省前テントひろばニュース」第14号を受け取った。
「即時原発ゼロ!再稼働反対」の横見出し下には「福島の子どもたちをめぐる現状」があった。公表された数値は“氷山の一角”と報道関係者は著し、「甲状腺がんが原発事故とは無関係である」との報告は、やはり憤りを感じる内容だった。

★ここで「秘密保護法案」の恐ろしさが実感できた。交差点でデモが停止する瞬間に狙いを定めて、必ずマスクをした公安警察署員の二人が旗やプラカードを掲げる人々を中心に、こまめに撮影していたことだ。つまり、デモ参加者の一人ひとりの秘密名簿が作成され、逐次チェックされる体制づくりが構築され、完全に法制化されるのだ。

★キャロライン・ケネディ駐日大使が、東日本大震災の被災地に来週訪れる予定だ。
「多くの苦難に直面しても、くじけずに頑張った被災者の姿は世界を鼓舞した。米政府として、引き続き必要な協力は何でもする」と表明。「整然とデモ」する冷静な日本国民と違い、日本の権力者は秘密時に「猪突猛進」するのでブレーキ役をお願い!

★『鐘撞き人』で1931年に時代設定された重大な理由がある。昭和8年は日米における「暗殺の歴史」のスタートにあたるからだ。その中でも1863年のリンカーン奴隷解放宣言から、ちょうど100周年の1963年11月22日ケネディ氏は暗殺された。
その50年後にキャロライン・ケネディが駐日大使に赴任された。期待したい。


2013(平成25)年11月22日
「ケネディ暗殺」の日に
posted by 岳重人 at 18:47| Comment(339) | 日記

2013年11月22日

「年齢レイティング」に思う……『鐘撞き人』からのメッセージ(11)

11月1日(火)に偶然にも愛と性に関した二本の洋画を観た。一本はFOXサーチライト20周年記念の第一弾ベン・リューイン監督『THE SESSIONS(セッションズ)』で、もう一本はフランソワ・オゾン監督『17歳』だ。アメリカとフランスの両国の映画作家たちが「人間にとっての愛と性」をこれほどまでに丁寧に描き切った作品を高く評価したい。

★『THE SESSIONS』はマーク・オブライエンのレポート「On Seeing a Sex Surrogate」をもとに障がい者の<愛と性>―語ることすらタブーの世界を描いた。原作の“Surrogate”がキーワードだ。“a surrogate mother”は「代理母」でわかるように劇中でヘレン・ハント演じるシェリルが「代理妻」のmake loveを果たす。

★『17歳』は授業でランボーの詩を朗読する普通の女子高生イザベルが「なぜ売春に走るのか」、それぞれモデル出身の新星マリーヌ・ヴィクトが<内なる謎>を妖しく演じている。初めての<夏>、秘密の<秋>、そして自分探しの<冬>と四季折々に思春期のナイーヴさが繊細に切り取られる。売春の不道徳さではなく若く美しい姿だ。

★はなはだ承服しがたいことがある。両作品はともに年齢制限[R-18+]にされていることだ。区分には4種あり、[G]=全年齢が鑑賞可、[PG12]=12歳未満には保護者の助言・指導が必要、[R15+]=15歳以上が鑑賞可、そして[R18+]=18歳以上が鑑賞可とレイティングされている。思春期の若者たちにこそ観せたいテーマなのに……。

★マーク(ジョン・ホークス)がポリオに感染する前の元気な少年だった時代を思い起こす重要シーンがある。シェリルのイメージトレーニングによって、マークは奮い立つわけだ。一方、イザベルには弟のヴィクトルがいて、彼女の成長がそのまま投影されている。まるで、代理妻も姉弟は≪合わせ鏡≫のように共鳴し合っているのだ。

★「障がい者の権利に関する条約」(’07年9月署名)という国際条約の第25条(健康)には、「差別なしに到達可能な最高水準の健康を享受する権利を有する……。障がい者がジェンダーに配慮した保健サービス(機能回復訓練を含む)を利用できる……」とある。この観点から検討すると、2009年以降で明らかに「映倫」は誤りを犯している。

★「ナチスに学べば」を思い起こす。既存の「芸術的・民族教育的・文化的に価値あり」に1933年6月、ナチスの宣伝相ゲッペルスは「特に価値あり」、「国家政治的に価値あり」そして「国家政治的に特に価値あり」を加える。このようなランク付けが行われ、国家の価値基準が4段階で差別化が図られ、プロパガンダ映画のみになる。

★1939年10月1日、日本の戦時下に「映画法」が設立されて内務省の検閲官による検閲が行われた。日本国憲法第21条の第二項に「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」とあるのは、あの時代を反省したためだ。両作品とも[R18+]を解消し、保護者の助言・指導のある[PG12]が妥当だと思われる。


2013(平成25)年11月21日
「特定秘密保護法案・廃案1万人集会の国会請願デモ」の日に
posted by 岳重人 at 22:36| Comment(0) | 日記

2013年11月20日

「改憲ナチスに学べば」に思うU…『鐘撞き人』からのメッセージ (10)

…麻生太郎副総理兼財務相の講演が内外の喧噪に晒される。「ドイツのワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。誰も気が付かなかった。あの手口を学んだらどうかね」と、ナチスを肯定したとも思われる発言が問題になっているからです。全体の主張は、喧噪のなかで憲法改正したくない、隠密裏にしたらどうか、でしょう…(2013・8・6『鐘撞き人』からのメッセージ6より)

★このように8月6日に「改憲ナチスに学べば」で警醒した。
その第一弾が「特定秘密保護法案」が急ピッチで、時の権力者にすべての権限が委任されるような形で、ナチス・ヒトラーが全権委任法によって独裁者の道に突き進む……
麻生氏が衆議院議員選挙の当日に安倍首相に「あなたは歴史上にない独裁者に……」と示唆した通りになる。

★キャロライン・ケネディ氏が軽やかに爽やかに新駐日大使として東京の地を踏みしめた。
来日後に11月16日はメディアの各紙が一面トップで報じた。
ちょうど半世紀前の11月22日には父のジョン・F・ケネディ大統領は ダラスで暗殺された。
あの時の衝撃は日米初の衛星放送で伝えられた。これも<歴史の因縁>が感じられる。

★<東北再生スケッチ>三部作の完結編の『鐘撞き人』第V部<愛と平和>篇が5月3日「憲法記念日」に上梓された。
その中で「一九六三年の国葬の際に『伝道の書』の朗読でケネディ大統領は荼毘に付され た。
長女のキャロラインは5歳だった」と触れている。
そのキャロラインさんが、まさかの日本大使として赴任されるとは。

★『鐘撞き人』の時代設定は1931年で、宮沢賢治が亡くなる2年前。
療養中の彼が「雨ニモマケズ」を記した年だ。
これは日本が15年戦争への序曲を奏でた年でもあった。
1931年、関東軍が9・18に満州事変を謀略し、<絶対国防圏>かつ<生命線>確保と拡大路線を取り始める。
11月16日に閣議はチチハル占領の否決をしたが。

★「時すでに遅し!」関東軍は独断専行の占領命令を下し、戦火は拡がりを消せない。
12月27日には閣議で満州へ朝鮮軍の一時的増派を決定、と国が関東軍の軍拡路線を追認していくことになる。
戦時体制を動かす<歴史の歯車>は、もう止めどもなく軍需産業の潤滑油を注がれてブレーキの効かない暴走機関車と成り果てていったのだ。

★自民党憲法改正草案「第99条の緊急事態の宣言の効果」に背筋が寒くなる。
「緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」と、国家暴走がOK。

★「特定秘密保護法」は、ちょうどヒトラーがワイマール憲法を<静かに>葬り去ったように、≪国民主権≫の現行法をないがしろにするための第一歩に位置付けられているのがわかるだろう。
現憲法の前文「日本国民は、正当に選挙された国会に……」に対して
改正案の前文は「日本国は、長い歴史と固有の文化……」と国家主義なのだ。


2013(平成25)年11月20日
「ケネディ暗殺」の2日前に
posted by 岳重人 at 16:26| Comment(0) | 日記