2014年01月31日

「施政方針演説」に年齢制限を思う……『鐘撞き人』からのメッセージ(48)

第一次安倍政権の時期に学校教育で『日本を、取り戻す。』の法律が完結していた。それは「教育基本法」改正だ。1947年教育基本法から約60年後の2006(平成18)年に、教育現場の反対を強引に押しつぶして「改悪」教育基本法を成立させている。その中で、第6条(学校教育)には第2項が追加された。それを分析すると見えてきた。

★「教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない」。そして、第二次安倍内閣の24日召集の通常国会の施政方針演説では新・教育基本法の「改悪」部分が強調されている。それは、「若者を伸ばす教育再生」に触れた部分にある。表向きとは違う本音を隠している。

★「若者たちには、無限の『可能性』が眠っています。それを引き出す鍵は、教育の再生です。…公共の精神や豊かな人間性を培うため、道徳を特別の教科として位置づけることとし、…教科書の改善に向けた取り組みを進めてまいります。…15歳の子供たちを対象とした国際的な学力調査で、日本の学力が過去最高になりました」

★安倍ボンの自画自賛が続く。「改正教育基本法の下、全国学力テストを受けてきた世代です。一次内閣以来の公教育の再生が、確実に成果を上げています。やれば、できる。2020年を目標に、中学校で英語を使って授業するなど英語教育を強化します。…『日本人はもっと自信を持って、自分の意見を言うべきだ』」と、留学生の言葉を引用。

★この施政方針演説のテーマは『創造と可能性』で、「やれば、できる」が4回出て来る。それは冒頭の2020年東京オリンピック、東北の「住まいの復興工程表」、先の世界一の読解力、最後に観光立国として2000万人を目指すことだ。人にこのようにしろというより、言い出した自分がまず始めなさいと、「まず隗より始めよ」も強調。

★極めつけはJ・F・ケネディ大統領の有名な就任演説だ。「世界の市民同胞の皆さん、米国があなたのために何をするかを問うのではなく、われわれが人類の自由のために、一緒に何ができるかを問うてほしい」と、自由と民主主義国家の原点を問いかけているが、安倍ボンは「国際協調主義に基づく積極的平和主義」にすり替える。

★公共の精神や豊かな人間性を培うために、道徳を特別の教科として位置づけ、教科書の改善に向けた取り組みに邁進する、の危険性にもうお気づきだろうか。ここに本音の部分があぶり出されている。殊更、道徳教育を強化することで、ますます年齢制限のレイティングが厳格になっていき、それは「想定内」の検閲制度に近づくだろう。

★『映画倫理綱領』の「6・性、暴力、犯罪、薬物などの表現」の(1)性表現は標的になる。性行為にかかわる表現は、観客に限度を超える性的刺激を与えないように留意する。未成年者の性行為や性的裸体描写には特に留意する、の2点は「伝家の宝刀」に格上げだ。「R15+」「R18+」が問答無用で乱発され、配給への実害が懸念される。(岳 重人)


2014(平成26)年1月26日
「文化財防火デー」の日に
posted by 岳重人 at 23:40| Comment(0) | 日記

「新・教育基本法」に年齢制限を思う……『鐘撞き人』からのメッセージ(47)

すでに触れた、1・映画の区分4つが関門だった。「G」年齢にかかわらず誰でも観覧できる。「PG12」12歳未満の年少者には親の指導・助言が必要だった。悪しきレイティングが「R15+」15歳以上、「R18+」18歳以上と成人映画指定だ。その理由に「未成年者の心身の成長に応じた学校教育の年齢に対応する階層的な構造を持つ」がある。

★第一次安倍政権の時期に学校教育で『日本を、取り戻す。』の法律が完結していた。それは「教育基本法」改正だ。1947年教育基本法から約60年後の2006(平成18)年に、教育現場の反対を強引に押しつぶして「改悪」教育基本法を成立させている。その中で、第6条(学校教育)には第2項が追加された。それを分析すると見えてくる。

★「教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行わなければならない」と、先の映画倫理綱領と非常に似ていることが分かるだろう。2006年教育基本法の3年後に映画倫理綱領が制定されている。冒頭に「次世代を担う未成年者がその成長に際し対応を誤ることのないよう配慮した」

★そして3・未成年への配慮として(1)年齢に対応した観客の権利を尊重し、その成長を阻害しないよう留意する。(2)年齢層に対応して推奨しうる映画を選定するため、映画倫理委員会委員長の諮問機関として「年少者映画審議会」を設ける、と規定。そこで2000年4月の改訂から約10年後の09年4月に新改訂が加えられたわけだ。

★「年少者映画審議会規定」の5・推薦の対象と推薦映画選定基準で、(2)推薦の選定基準の5つを見てみよう。ア)生命の尊さを自覚させ、愛情をはぐくむ、イ)行動規範を身につけ、倫理観・正義感を高める、ウ)社会的視野を広げ、他者への想像力を醸成する、エ)知識・教養を養う、オ)芸術への理解と感覚を培う、とある。

★ここで年少者とは18歳未満の者をいう。新・教育基本法には第2条「教育の目標」が5項目追加された。−幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと、とあるように第1項だけでも、先の選定基準が教育基本法をベースに決定されていることが明確である。

★6.審査の方針も検討しよう。年齢層別に設定した「区分」のいずれかに分類するに際しては、以下の要領で行う。(1)いかなる主題がどのように表現されているか。(2)各場面でどのような題材が用いられ、それが映像の流れの中でどの程度まで刺激的、又は抑制的に描かれているか。つまり表現法と各シーンの流れがチェック対象になる。

★そして最後に、(3)作品の全体像が観客にもたらし得るメッセージ及び心理的な効果などを総合的に判断する、と作品の全体像が審査されるわけだ。綱領筆頭に1・表現の自由がある。「表現の自由は、映画の製作と上映にたずさわるすべてのものにとって、最も重要な権利である」を、映倫維持委員会は守り続ける責務があるだろう。(岳 重人)


2014(平成26)年1月24日
「初地蔵」の日に
posted by 岳重人 at 22:59| Comment(0) | 日記

「二本立て興行」に年齢制限を思う……『鐘撞き人』からのメッセージ(46)

先に歴史を振り返った。1939年10月1日「映画法」制定の2年前に第74回帝国議会で空前の大ヒット作『オーケストラの少女』論争があった。映画法案の審議の際、野口喜一代議士が非難攻撃した。「外画専門館には必ず国策映画を併合上映せしめ、二本立興行にすることが絶対に必要だ」と、当時の外国映画への偏見が表れていた。

★野口代議士の暴論を現代に当てはめてみると矛盾が見えてくるだろう。そのことを分かり易く理解するために、少し映画業界についておさらいをしておこう。まず、「配給」についてだ。完成した映画を製作者から買い付けて、劇場で公開するまでの一連の業務をいう。その業務内容は、1.買い付け、2.劇場ブッキング、3.宣伝の3つだ。

★そこで、すでに触れた、1・映画の区分4つが関門だった。「G」年齢にかかわらず誰でも観覧できる。「PG12」12歳未満の年少者には親の指導・助言が必要だった。悪しきレイティングが「R15+」15歳以上、「R18+」18歳以上と成人映画指定だ。その理由に「未成年者の心身の成長に応じた学校教育の年齢に対応する階層的な構造を持つ」

★よって「これにより観客が被る恐れがある衝撃、不快感、差別感、嫌悪感の軽減を図る」と続いた後に「GとR15+作品の2本立ての場合は、R15+としての興行になる」とダメ押しされる。これは配給会社にとって死活問題である。単館ロードショーでも営業に大変なのに、二本立て興行では最初からダメだと指定されたようなものだ。

★具体的に考えよう。3月1日(土)公開のアマンダ・セイフライド主演の『ラヴレース』は「R18+」。映画倫理委員会の審査コメントは次のようなものだ。「1972年のポルノ映画『ディープ・スロート』の主演女優、リンダ・ラヴレースの半生を描く、伝記ドラマ。大人向けの作品で、極めて刺激の強い性描写及び麻薬の常用、性的台詞」

★さらに「性的攻撃の描写がみられ」「R18+」になった。性的攻撃は、いわゆるドメスティク・バイオレンス(DV)と呼ばれる行為である。ポルノ女優のラヴレースLOVELACE役を、最近の大ヒット作『レ・ミゼラブル』のコゼット役で素晴らしい歌声を聞かせてくれた女優アマンダが、演じているので全く「不快感、嫌悪感」はない。

★もう一本は1月11日公開の『ブラインド・フィアー』だ。「イラクで負傷し視力を失った報道写真家のサラは、一緒に住む彼氏が隠した宝石を狙う犯罪者のターゲットに…サスペンス/スリラー。ナイフによる殺傷及び多量の出血の描写」で「PG12」。「暗闇を利用した生死を賭けた作戦」の評価通り、なんら年齢制限するべきでない。

★この映画の配給会社は共に日活だ。1971年から88年まで低予算の成人映画のブランド「にっかつ(日活)ロマン・ポルノ」を確立した。ここから、現在活躍する多くの映画作家が育った現場だった。まるで、最初から偏見でレイティングしているようだ。これら二本立て興行を打てば、『ブラインド・フィアー』まで成人映画指定になる。(岳 重人)


2014(平成26)年1月23日
「ふみ」の日に
posted by 岳重人 at 22:25| Comment(0) | 日記