私自身が1946年生まれで、いわゆる≪平和憲法≫と共に生きてきた実感が強い。
この間、日本人は他国との戦争によって犠牲者を出してはいない。
何か現代の若者は「平和ボケ」して軟弱だとか、愛国心が足りないとか、為政者はとかく「強い日本」ばかりを強調している。
2. 「祖国に捧げる死は、甘美である」とは、日本の特攻隊で命を捧げた青年たちの遺言では
ない。
ルイス・マイルストン監督『西部戦線異状なし』(30)が、情念で戦場に駆り立てる世相を反映したドイツを活写。
そのためか、ナチスによる上映妨害第1号になる。
第3回アカデミー賞の作品・監督賞をダブル受賞しているにもかかわらず……。
3. ちょうど80年前の1933年、日本国憲法と並び称されるワイマール憲法が、ヒトラー率いるナチスによって葬り去られ、ナチ独裁体制が確立されていった。
十代の若者たちも<ヒトラー・ユーゲント>として、独裁者たちの手足として動員された。
その背景には青年教育によって、永続的なナチス運動を定着させる狙いがあった。
4. 「いま私がたっている場所に、もうすぐあなたが立つのです。」と、ギロチン台に立たされたゾフィー・ショルは民族裁判所長官ローラント・フライスラー判事に凛々しく反論。
マルク・ローテムント監督『白バラの祈り〜ゾフィー・ショル、最後の日々』(05)は第55回ベルリン国際映画祭銀熊賞・最優秀監督賞・同女優賞に輝いた。
5. 昨年、生誕百周年を迎えた木下惠介監督『陸軍』(44)は、祖父、父、息子の三代に渡っ
て陸軍に捧げつくした一家の物語。
母(田中絹代)が出征する息子を見送るラストの長い移動シーンが美しくて感動的にもかかわらず、「戦意高揚にならない」と陸軍で問題にされ、国策映画の検閲に触れ、木下監督は映画界の仕事を奪われる。
6. 今から90年前の関東大震災の大正12(1923)年と平成23(2011)年の東日本大震災に奇妙な「23」という数字が隠れている。
2年後の1925年3月には衆議院で治安維持法が可決される。
平成25年7月には、参議院選挙で日本国憲法を根本的に改変するために、「憲法96条を変える」を選挙の争点にすべく世論を盛り上げている。
7. このような危機感から一冊の本を上梓。それが<東北再生スケッチ>三部作の完結編の『鐘撞き人』第V部<愛と平和>篇である。
≪平和憲法≫第9条、第19条「思想及び良心の自由」と第99条「憲法尊重擁護の義務」を<世界の知的文化遺産>として世界に広めよう、とファン・ホッホ(ヴァン・ゴッホ)が呼びかけている。

2013(平成25)年5月3日 「66歳の憲法記念日」に 岳 重人