2013年10月01日

「はだしのゲン」に思う……『鐘撞き人』からのメッセージ(7)

漫画家中沢啓治さんの『はだしのゲン』が松江市教委の福島律子前教育長によって閲覧制限図書になった。そもそも新大久保などで在日コリアンへの排撃を掲げ、ヘイトスピーチで悪名高い「在特会」のメンバーが、『はだしのゲン』の残虐さは子ども達に恐怖心を与え、歴史認識においても不適切だ、と陳情書を市教委へ提出した。

★当初、市議会の対応は全会一致で陳情書は不採択。担当者も「撤去はしない」方向で進めていたが、教育長の独断で憲法21条「表現の自由」が侵されるのは、第二次安倍政権になって「自虐的歴史観を追放しろ」という雰囲気が立ち込めていることだ。それらが市教委にも小中学校の現場でも、大なり小なり心的圧力をかけている。

★この秋、「秘密保護法案」が上程予定だ。また、年内には日本版NSC(国家安全保障会議)をアメリカの圧力から創設される。そうなると、マスメディアでさえ調査報道のために資料請求も政治家や官僚の取材も「国家機密」ということで情報統制が行われ、70年前の「大本営発表」の状況に陥る。物言えぬ雰囲気が完全構築される。

★この春「憲法記念日」の5月3日に上梓した『舟曳き人』第U部(愛と平和)篇は、「歴史は繰り返す」をテーマに治安維持法の復活の時代を警鐘している。まさに1985年に廃案になった「国家機密法(スパイ防止)」がゾンビのように約30年ぶりに息を吹き返した。「戦時下の監視体制に逆戻りする」危険性が本物になってきた。

★1939年には映画の世界では「映画法」が制定されて内務省の検閲官による脚本の審査が行われた。現在公開中の妹尾河童原作の映画『少年H』は公開禁止だろう。原作の段階で発禁本になる。なぜなら、妹尾家族にはキリスト教徒がいる。異教の存在でスパイ呼ばわりされても当たり前。周りは見て見ぬふりして生活するしかない。

★アメリカの少女が「はだしのゲン」に影響を受けて漫画家になった。ニューヨーク在住のレイナ・テルゲマイヤさん(36)は9歳の時、父からすすめられた英語版『はだしのゲン』を読んで「幅広い問題意識を持ち、周囲にもっと目を向けられるようになった。ショッキングな表現もあるが、読んでよかった。」と、思い起こしている。

★ドイツのメルケル首相は、現役の首相では初めてヒトラーが80年前に設置した最初のダッハウ収容所跡で花束を壁に立てかけて祈りを捧げ「深い悲しみと恥ずかしさを感じる」といい、「若者はドイツがどんな悲劇を起こしたか知らねばならない」と強調して歴史教育の重要性を訴えた。戦争責任をとらない日本はどうだろうか。

2013(平成25)年8月25日
「世界平和念仏」の日に 岳 重人
posted by 岳重人 at 16:13| Comment(0) | 日記
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