2013年12月12日

「人権週間」に年齢制限を思う……『鐘撞き人』からのメッセージ(18)

今日から12月10日まで「人権週間」だ。
好奇心が一番旺盛な中高生が好きな映画を観ることを制限されるのは不愉快だろう。
それが[R15+][R18+]といったR指定だ。いわゆるレイティングと呼ばれる年齢制限による規制であり、事実上若者たちへの「映画統制」になる。
戦前には14歳になるまで映画館に入ることは許されなかった。

★つまり、戦前の映画法では全部[R15+]だった。ところで、1948年12月10日に世界人権宣言が第3回国連総会で採択された。その中で第27条〔文化的権利〕について考えてみよう。
「すべての者は、自由に社会の文化的な生活に参加し、芸術を享受し、並びに科学の進歩及びその利益を享受する権利を有する」と、第1項にある。

★さらに、第2項には「すべての者は、自己の科学的、文学的又は芸術的作品により生ずる精神的及び物質的利益の保護についての権利を有する」とあり、観る側と創る側の双方で科学的、文学的かつ芸術的な文化権利を「すべての者」が権利として持つことが宣言されている。この観点でR指定による年齢制限は納得がいかないだろう。

★もう一つ重要な第19条〔意見及び表現の自由〕で検証すると、矛盾点が明確になる。「すべての者は、意見及び表現の自由についての権利を有する。この権利には、干渉されることなく意見を持つ自由並びに、あらゆる方法により、国境とのかかわりなく、情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む」と、憲法第21条と同じ条項だ。

★少し歴史を振り返ってみよう。1939年10月1日「映画法」制定の2年前に、帝国議会で空前の大ヒット作『オーケストラの少女』論争があった。映画法案の審議の際、野口喜一代議士が非難攻撃した。「外画専門館には必ず国策映画を併合上映せしめ、二本立興行にすることが絶対に必要だ」と、当時の外国映画への偏見が表れている。

★「アメリカニズムに陶酔して時を過ごす如きは以ての外で、決して国民教化と善導とはならぬ」とし、具体例に「明眸皓歯のディアナ・タービンを主役とするオーケストラの少女が一たび封切らせらるるや、帝都の洋画ファンは挙げて熱狂して、続映更に続映の場合を展開した」と、澄んだ美しい瞳と白い歯の美人の象徴に嫉妬している。

★さらに、笑えない抗議が続く。「是等から我が日本人の得たものは何か、未だ残存する碧眼紅毛に対する依存的思想と、一本に80万円の邦貨を米国へ流れ込ました国家的損失の2つを挙げざるべからざる事実があるのであります」と、外国映画排斥を徹底しているナチス・ドイツに倣え、と1934年2月のドイツ「映画法」を例示した。

★この暴論に対して「外国映画があって日本映画が発達するのではないか」という
立場から鶴見祐輔代議士は切り返すが、衆寡敵せずだ。帝国議会での少数派の反論も線香花火のようで、外国映画への検閲がますます厳格になっていく。
現在のR指定による年齢制限も反対とは言えない時代が到来した。
「非国民」として排撃されたのだ。(岳 重人)


2013(平成25)年12月4日
「人権週間」に
posted by 岳重人 at 07:52| Comment(0) | 日記
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