2013年12月31日

「初の国家安全保障戦略」に思う……『鐘撞き人』からのメッセージ(24)

史上最悪の「特定秘密保護法」とセットの日本版NSC(国家安全保障会議)が、12月4日に発足した翌日には閣議で、「武器輸出三原則」を見直すことを現政権は決めた。実はこれがアベノミクスの「第三の矢」の隠れた意味だったことが明らかになった。つまり、軍需産業の銃器や兵器の輸出拡大に伴って経済界に貿易黒字を促す。

★12月17日に日本版NSCと閣議で、外交・安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」と国防の基本方針になる「新防衛大綱」、「中期防衛力整備計画」(中期防)を決定。案の定、経団連の米倉弘昌会長は「防衛力を支える防衛生産・技術基盤の維持・強化のため、将来ビジョンを示す戦略の策定が示されたことを評価する」と歓迎の表明。

★武器輸出三原則の緩和に対しても「防衛装備品の活用による平和貢献・国際協力や防衛装備品などの共同開発・生産の推進が可能となる具体的な制度の設計」を期待するとのコメントを発表した。「中期防」の「(3)防衛力の能力発揮のための基盤(5)防衛生産・技術基盤」の引用であり、総額24兆6千7百億円の増額だ。

★つまり、2014年度から5年間の防衛予算が25兆円として毎年5兆円になる。
当然、産業界が防衛装備品関連への波及効果と武器輸出三原則の緩和に伴う需要増加を期待している。後半部の「共同開発・生産の推進」では、日本部品による次期主力戦闘機であるステルス戦闘機F35もアメリカから28機と高額購入・配備するわけだ。

★<東北スケッチ>三部作の『鐘撞き人』第V部<愛と平和>篇では、読売新聞の戦争責任検証委員会による『検証・戦争責任T・U巻』(中央公論新社刊)を引用。そこでは、「昭和前期の軍事費の伸び」の図表を示した。今まで抑え気味だった平成の軍事費が、将来的に第二次安倍政権で大幅に伸びていくのは1937(昭12)年と同じだ。

★「この年に日中戦争が始まった。財政赤字はすでに対GNP比率で50%を超えていたが、太平洋戦争が始まった1941(昭16)年には100%に近づいた。わずか6年間だった。どちらの場合も、無理な圧力のために財政に重大な歪みが生ずる事態を広く国民に訴え、国民を味方につけ、新聞メディアも異論反論していれば……」と分析。

★さらに「取り返しのつかない15年戦争の道を事前に防ぐことができただろう。健全な社会は健全な民主主義によってのみ支えられる。つまり、財政民主主義がない民主主義もありえない。これは戦前の『軍事経済』と戦後の『成長福祉経済』とでは全く対照的に異なるのに、なぜ政治は懲りずに『同じ過ちを繰り返す』のか」と問い、

★「それは政治過程における対処の仕方がまるで戦前と同じで、日本は全く変わっていないからだよ」と結論付けている。また、「2010年に日本の政府債務の残高が、対GNP比率で敗戦前年の1944(昭19)年と同じ200%に達した」と、現在の政治状況に似ている。まさに「第三の矢」の標的とは「武器輸出三原則」緩和が自明の解なのだ。(岳 重人)


2013(平成25)年12月18日
「武器輸出緩和明記」の翌日に
posted by 岳重人 at 18:37| Comment(0) | 日記
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