2014年01月31日

「二本立て興行」に年齢制限を思う……『鐘撞き人』からのメッセージ(46)

先に歴史を振り返った。1939年10月1日「映画法」制定の2年前に第74回帝国議会で空前の大ヒット作『オーケストラの少女』論争があった。映画法案の審議の際、野口喜一代議士が非難攻撃した。「外画専門館には必ず国策映画を併合上映せしめ、二本立興行にすることが絶対に必要だ」と、当時の外国映画への偏見が表れていた。

★野口代議士の暴論を現代に当てはめてみると矛盾が見えてくるだろう。そのことを分かり易く理解するために、少し映画業界についておさらいをしておこう。まず、「配給」についてだ。完成した映画を製作者から買い付けて、劇場で公開するまでの一連の業務をいう。その業務内容は、1.買い付け、2.劇場ブッキング、3.宣伝の3つだ。

★そこで、すでに触れた、1・映画の区分4つが関門だった。「G」年齢にかかわらず誰でも観覧できる。「PG12」12歳未満の年少者には親の指導・助言が必要だった。悪しきレイティングが「R15+」15歳以上、「R18+」18歳以上と成人映画指定だ。その理由に「未成年者の心身の成長に応じた学校教育の年齢に対応する階層的な構造を持つ」

★よって「これにより観客が被る恐れがある衝撃、不快感、差別感、嫌悪感の軽減を図る」と続いた後に「GとR15+作品の2本立ての場合は、R15+としての興行になる」とダメ押しされる。これは配給会社にとって死活問題である。単館ロードショーでも営業に大変なのに、二本立て興行では最初からダメだと指定されたようなものだ。

★具体的に考えよう。3月1日(土)公開のアマンダ・セイフライド主演の『ラヴレース』は「R18+」。映画倫理委員会の審査コメントは次のようなものだ。「1972年のポルノ映画『ディープ・スロート』の主演女優、リンダ・ラヴレースの半生を描く、伝記ドラマ。大人向けの作品で、極めて刺激の強い性描写及び麻薬の常用、性的台詞」

★さらに「性的攻撃の描写がみられ」「R18+」になった。性的攻撃は、いわゆるドメスティク・バイオレンス(DV)と呼ばれる行為である。ポルノ女優のラヴレースLOVELACE役を、最近の大ヒット作『レ・ミゼラブル』のコゼット役で素晴らしい歌声を聞かせてくれた女優アマンダが、演じているので全く「不快感、嫌悪感」はない。

★もう一本は1月11日公開の『ブラインド・フィアー』だ。「イラクで負傷し視力を失った報道写真家のサラは、一緒に住む彼氏が隠した宝石を狙う犯罪者のターゲットに…サスペンス/スリラー。ナイフによる殺傷及び多量の出血の描写」で「PG12」。「暗闇を利用した生死を賭けた作戦」の評価通り、なんら年齢制限するべきでない。

★この映画の配給会社は共に日活だ。1971年から88年まで低予算の成人映画のブランド「にっかつ(日活)ロマン・ポルノ」を確立した。ここから、現在活躍する多くの映画作家が育った現場だった。まるで、最初から偏見でレイティングしているようだ。これら二本立て興行を打てば、『ブラインド・フィアー』まで成人映画指定になる。(岳 重人)


2014(平成26)年1月23日
「ふみ」の日に
posted by 岳重人 at 22:25| Comment(0) | 日記
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