2014年04月23日

「国家主義者」に海外メディアを想う………『国護り人』のメッセージ(62)

別に驚くに値しない。なぜならば、確信犯がアドバルーンを掲げて、安倍ボンの代理で発言効果を試しているだけだ。相乗効果で自作の本は売れる。映画の逆宣伝になる。これは宮崎駿監督の引退宣言と同じ効果を持つ。近々、映画『永遠の0』も100億円の興収を稼ぐかもしれない。戦後レジームの「和解と信頼」を破壊する言動だ。

★2000年9月来日のプーチン大統領と北方領土交渉をしたのは森善朗首相だった。その当時の森首相も軽率な発言で海外メディアに批判された。2000年5月15日、東京都内で開かれた神道政治連盟(神政連)議員懇談会30周年祝賀会に内閣総理大臣として祝辞を述べた。その中で問題発言が飛び出した。それが『神の国』発言だ。

★「日本の国、まさに天皇を中心にしている神の国であるぞということを国民のみなさんに承知していただく、その思いで、われわれは活動して30年になるわけでして……」の冒頭の挨拶に対して、マスメディアが一斉に報道し、野党各党も森発言を国民主権や信教の自由を定めた憲法に違反する疑いがある、と激しく抗議したものだ。

★だが、森首相は、「日本の悠久の歴史と伝統文化という意味で申し上げており、戦後の主権在民とは何ら矛盾しない」と、自らの舌禍を撤回しなかった。あの当時にも私は、日本人は自虐思想を植え付けられ、今時の日本人が『愛国心』のない(神国日本)にふさわしくない、とでも言いたいのか、と百田発言へと同じ疑義を感じていた。

★「日本の森善朗・新首相は考える前に話すのか、それとも、考えているとおりに話すのか。後者だとすれば、さらにゆゆしい。なぜなら、政府のトップが、日本はいまなお『神々の国であり、その中心に天皇がいる』と信じていることを意味するからだ」。日本の最高権力者のポストにある人物が、なぜ戦前回帰のような発言をするか。

★「第二次世界大戦の戦前と戦中、国家神道と『神=天皇』の名において、近代的なニッポン侵略軍部隊が全アジアへ襲いかかったのではなかったか?」と『南ドイツ新聞』2000年5月17日付で、日本人は戦前の危険な国家主義思想を克服していないのではないか。「神の国」発言は、改めて国際社会に不信感を強めることになる。

★同年6月4日付の『ワシントンポスト紙』社説も警告した。「日本の首相が、自分の国を『天皇を中心とした神の国』と呼ぶとき、アメリカの政策立案者はしっかりと注意を向けなければならない。この発言は、日本のナショナリスト(国家主義者)の感情を示している」が、安倍ボンの言動に対しても同じ論調だとお気づきだろう。

★「そうしたナショナリズムは、アジアへの領土拡張からついにはアメリカとの戦争にいたらせた、理解しがたい熱狂的愛国主義への郷愁をふくんでいる」と結論付けた。14年前に指摘された「熱狂的愛国主義への郷愁」が、今の日本人に押し寄せてはいないだろうか。一知半解で猪突猛進の安倍ボンの言動は、何事にも扇動的である。(岳 重人)


2014(平成26)年2月9日
「都知事選」の日に
posted by 岳重人 at 14:48| Comment(0) | 日記

2014年04月18日

「NHK経営委員」に亡国を想う………『国護り人』のメッセージ(61)

安倍ボンは「『不可能だ』と諦める心を打ち捨て、わずかでも『可能性』を信じて、行動を起こす。一人ひとりが、自信を持って、それぞれの持ち場で頑張ることが、世の中を変える大きな力になると信じます」。自信過剰が怖い。私は若い頃に旅した根室港の大岩に白ペンキで殴り書きされた「北方領土を返せ!」が目に焼き付いている。

★今年の1月1日に(「元旦・ある特攻隊員」を想う)シリーズをスタートした。その中で安倍ボンの<お・と・も・だ・ち>の一人でNHK経営委員の要職にも推薦された百田尚樹氏について触れた。その時「『誤った愛国心を正す』ことなのだと一方的に突き進んできた戦後のイデオロギーに異を唱えることだった」の主張も紹介した。

★本屋さんに立ち寄ってみると、一番目立つコーナーには百田尚樹著『永遠の0』などの著作物が平積みされて、「今、一番旬な作家」という立札までつく栄誉に輝いている。現段階で山崎貴監督の映画『永遠の0』は興行収入で7週連続トップ1、引退宣言した宮崎駿監督『風立ちぬ』の8週を抜くか、と話題になる破竹の勢いだ。

★2013年興収ベスト5のトップの『風立ちぬ』は約120億円と断トツだった。それに迫る勢いで、昨年の12月21日公開から1月末までに65億円突破し、80億円も夢でない。それだけ影響力が絶大な作品であり、人物になりつつある。そんな百田氏が、かなり物議を醸す論客としても世間を賑わしている。その言動の一部も見よう。

★「日本は戦争に負け、連合国総司令部GHQが当時の日本人に何をしたか。徹底した自虐思想を植え付けた。『日本人、おまえたちが悪いことをしたんだよ』と。なぜか。極東国際軍事裁判(東京裁判)のせいだ」。日本人は自虐思想を植え付けられ、今時の日本人が『愛国心』のない<神国日本>にふさわしくない、とでも言いたいのか。

★「戦後、東京裁判で突然、亡霊のごとく南京大虐殺が出てきた。米軍が自分たちの罪を相殺するためだ。東京大空襲、原爆投下は米軍が悪いのではない。おまえたちが悪いことをしたから、こうなったんだということで、米軍が持ってきたのが南京大虐殺だった。最初は20万人だったが少ないということで30万人にした」と、吠える。


★「とんでもない話だ。確かに戦争だから残虐行為はあった。日本軍も残虐なことをした。でも、これは米軍もしたし、ソ連人もしたし、中国人もした。どこの国もした。これは歴史の裏面、黒い面だ」と東京都知事選の応援演説で飛び出した問題発言だ。しかし、官房長官は「百田氏が個人的に行ったことだ」と、不問に付す態度である。

★別に驚くに値しない。なぜならば、確信犯がアドバルーンを掲げて、安倍ボンの代理で発言効果を試しているだけだ。相乗効果で自作の本は売れる。映画の逆宣伝になる。これは宮崎駿監督の引退宣言と同じ効果を持つ。近々、映画『永遠の0』も100億円の興収を稼ぐかもしれない。戦後レジームの「和解と信頼」を破壊する言動だ。(岳 重人)


2014(平成26)年2月8日
「大雪」の日に
posted by 岳重人 at 17:43| Comment(0) | 日記

2014年04月16日

「故マンデラ氏」に北方領土を想う………『国護り人』のメッセージ(60)

『自由憲章』「全人民の意志に基づいた民主的な国家だけが、肌の色や人種、性別、信条によって区別されることのない生得権を人民に保証することができる」はアフリカ民族会議ANCが1955年採択の人種差別の撤廃宣言。12月10日のネルソン・マンデラさんの追悼式典で、人権感覚のない我が国の首相は、どういうわけか欠席だった。

★今度はプーチン大統領の人権侵害に対して、欧米の首脳達がソチでの冬季オリンピック開会式に欠席表明しているにもかかわらず、やはり、人権感覚欠如の安倍ボンは開会式列席のため補正予算が決定後にイソイソと空の人になった。これも北方領土の返還交渉を少しでも有利に導くための首脳会談の開催だという。今回で5回目だ。

★少し北方領土問題のABCを復習しておこう。日露の長い歴史の中で複雑な経緯があるので、ここではソ連崩壊後の「東京宣言」から始めよう。現在、都知事選挙に立候補している細川護煕氏が首相時代の1993年、エリツィン大統領が来日した。細川首相との会談で、北方四島が日露間の領土問題である点を再確認する宣言を発表した。

★4年後の1997年のエリツィン・橋本首相会談では「東京宣言に基づき、2000年までに平和条約を締結するように全力を尽くす」と、クラノヤルスク合意をした。翌1998年に訪日したエリツィン大統領は「平和条約が東京宣言の第二項に基づいて四島の帰属の問題を解決する内容」とすることを再確認する川奈合意をしたわけだ。

★同時にロシアに対する経済協力推進のための「橋本・エリツィン・プラン」の実施で一致した。これらの考え方は基本的にプーチン現ロシア大統領にも引き継がれるが、2000年9月の訪日時には、先の三つの東京・クラスノヤルスク・川奈合意を継承した上で、ロシアは日ソ共同宣言の二島返還を主張して一歩も譲らない状況になった。

★「平和条約の締結後の歯舞諸島、色丹島の返還を明記した1956年の日ソ共同宣言の有効性を確認する」と切り返し、日本側の「択捉、国後、色丹、歯舞の四島同時返還」の動きを牽制する交渉に……。四島は1855年の日露通商友好(和親)条約に根拠を置いている。千島列島における日露の国境が択捉島とウルップ島の中間の海峡とされた。

★安倍ボンの施政方針演説の冒頭を思い起こそう。「“何事も、達成するまでは、不可能に思えるものである”ネルソン・マンデラ元大統領の偉大な足跡は、私たちを勇気づけてくれます。誰もが不可能だと諦めかけていたアパルトヘイトの撤廃を、その不屈の精神で成し遂げました」とは、場違いな引用に失笑したのは私だけだろうか。

★さらに「『不可能だ』と諦める心を打ち捨て、わずかでも『可能性』を信じて、行動を起こす。一人ひとりが、自信を持って、それぞれの持ち場で頑張ることが、世の中を変える大きな力になると信じます」。自信過剰が怖い。私は若い頃に旅した根室港の大岩に白ペンキで殴り書きされた「北方領土を返せ!」が目に焼き付いている。(岳 重人)


2014(平成26)年2月7日
「北方領土」の日に
posted by 岳重人 at 17:20| Comment(0) | 日記